刑事訴訟法の改正(再審)
正式名:刑事訴訟法の一部を改正する法律
再審手続の証拠提出命令、再審開始決定等への不服申立ての要件、裁判官の除斥、審理の手順、費用補償等を定める法律。
主な内容
- 審判開始決定をした裁判所は一定の要件の下で検察官に再審請求理由に関連する証拠の提出を命じなければならない。謄写された検察官提出証拠の複製等の適正管理と目的外使用禁止の規定を整備する。
- 再審開始決定等に対する即時抗告等は取り消されるべき十分な根拠がある場合に限る。政府は再審開始決定等と検察官の即時抗告等の有無・理由を公表する。通常審に関与した裁判官等を一定範囲で再審手続・再審公判から除斥する。
- 再審請求を受けた裁判所は遅滞なく調査し棄却・再審開始・審判開始の決定をしなければならず、請求者等は事実の取調べを請求でき、裁判所は審理終結日と決定日を通知する。無罪確定時は請求手続費用を一定範囲で補償する。衆議院で、検討対象に「証拠の目的外使用の禁止に関する制度及び検察官が保管する証拠の一覧表に関する制度」を例示追加し、任意の証拠提出・開示の運用上の措置を附則に追加する修正が行われた。
- 施行は一部の規定を除き公布の日から起算して1年を超えない範囲内において政令で定める日。
なぜ出されたか
内閣は、近年の刑事事件の再審手続をめぐる諸事情を踏まえ、再審が非常救済手続としてより適切に機能するようにするためとしている。再審請求審における証拠の提出命令、再審開始決定に対する検察官の不服申立て、裁判官の除斥、審理を要するものを選別する調査手続、審理を要するものについての審判手続などの規定を整備するとしている。
だれに関係するか
再審請求者とその弁護人、証拠提出や不服申立ての規律が変わる検察官、再審を審理する裁判所・裁判官、検察官の即時抗告等の有無と理由を公表する政府が対象となる。無罪判決が確定した者には再審請求手続の費用が一定の範囲で補償される。
国会での議論
衆議院法務委員会は参考人の意見聴取や高市首相への質疑を経て、6月12日、自民党・日本維新の会・参政党の修正案(検討事項の例示追加、任意の証拠提出・開示の適切な実施)を可決し、修正議決すべきものとした。国民民主党の修正案と野党提出の対案は否決された。参議院法務委員会では、検察官の不服申立ての全面禁止の必要性、証拠の目的外使用禁止の是非、証拠の一覧表開示の必要性などについて質疑があった。立憲民主・無所属と公明党の修正案は否決され、多数で原案どおり可決すべきものとした。両院の委員会とも附帯決議を付した。
- 【賛成】自由民主党・無所属の会:自由民主党・無所属の会は、証拠の提出命令制度の創設で必要な証拠の迅速な提出が実現するとした。また、検察官の不服申立てを原則禁止とし十分な根拠がある場合に限り認めることで、法的安定性と誤判からの迅速な救済を調和させるとして、賛成した。
- 【賛成】参政党:参政党は、改善点は残るとしつつ、証拠提出命令の創設や検察官の不服申立ての原則禁止は冤罪からの救済の前進だとした。与党と共同提出した修正で、任意の証拠開示を適切に行うことや5年ごとの見直し対象が附則に明記されたことも挙げ、賛成した。
- 【賛成】日本維新の会:日本維新の会は、証拠提出命令制度により明確なルールの下で必要十分な証拠の迅速な提出が実現するとした。検察官の不服申立ての原則禁止はバランスの取れた対応だとし、不服申立て後も1年以内の決定に努める規定が附則に明記されたことを挙げ、賛成した。
- 【反対】中道改革連合・無所属:中道改革連合・無所属は、請求人本人への証拠開示が制度化されていないこと、不服申立てを認める「十分な根拠」が検察官自身の行為規範にすぎないこと、証拠の目的外使用禁止が支援・検証活動に萎縮効果を与えかねないことを挙げ、反対した。
- 【反対】国民民主党・無所属クラブ:国民民主党・無所属クラブは、裁判所の職権による証拠開示の制度化が見送られたこと、不服申立ての例外の可否を検察官自身が判断するため制限に実効性がないこと、目的外使用禁止の線引きが不明確で正当な検証活動を萎縮させかねないことを挙げ、反対した。
- 【反対】チームみらい:チームみらいは、請求人が証拠の全体像を把握しにくく、開示範囲が裁判所の裁量に左右され救済の入口が狭くなるおそれがあるとした。証拠の目的外利用を罰則で禁じれば社会での検証が萎縮しかねず、抗告の例外も抜け道となりかねないとして、反対した。
- 【反対】立憲民主・無所属:立憲民主・無所属は、証拠提出命令の対象が再審請求理由と関連する証拠に限られ、無罪につながる幅広い証拠開示にならないとした。また、証拠の目的外使用の全面禁止には立法事実がなく、迅速な救済には検察官抗告の全面禁止が必要だとして、反対した。
- 【反対】国民民主党・新緑風会:国民民主党・新緑風会は、再審請求理由との関連を問わない幅広い証拠の開示が制度化されず、裁判官の勧告や検察官の任意という運用に任されたとした。また、証拠の目的外使用を罰則付きで一律に禁止せず個別判断とすべきだとして、反対した。
- 【反対】公明党:公明党は、証拠提出命令が関連性のある証拠に限られ、請求人が証拠にアクセスできない場合があるなど証拠開示の手続が不十分だとした。目的外使用禁止と罰則は立法事実がなく萎縮効果が大きいとし、抗告の例外で原則と例外が逆転しかねないとして、反対した。
会派ごとの賛否(参議院 2026年7月17日)
賛成 138票・反対 104票
| 会派 | 所属 | 賛成 | 反対 |
|---|---|---|---|
| 自由民主党・無所属の会 | 101 | 98 | 0 |
| 立憲民主・無所属 | 40 | 0 | 40 |
| 国民民主党・新緑風会 | 25 | 0 | 25 |
| 公明党 | 21 | 0 | 21 |
| 日本維新の会 | 19 | 19 | 0 |
| 参政党 | 15 | 15 | 0 |
| 日本共産党 | 7 | 0 | 7 |
| れいわ新選組 | 5 | 0 | 5 |
| 日本保守党 | 2 | 2 | 0 |
| 沖縄の風 | 2 | 0 | 1 |
| チームみらい・無所属の会 | 2 | 1 | 1 |
| 社会民主党 | 2 | 0 | 2 |
| 各派に属しない議員 | 6 | 3 | 2 |
出典
- 参議院 議案情報(第221回国会 閣法第61号・議案要旨)
- 参議院 本会議投票結果(2026-07-17)
- 衆議院 議案本文情報(第221回国会(特別会) 閣法第61号・提出時の法律案の理由)
- 国会会議録(衆議院 本会議 2026-06-16・井上英孝委員長の報告)
- 国会会議録(参議院 本会議 2026-07-17・伊藤孝江委員長の報告)
- 国会会議録(衆議院 本会議 2026-06-16・神田潤一議員の討論)
- 国会会議録(衆議院 本会議 2026-06-16・和田政宗議員の討論)
- 国会会議録(衆議院 法務委員会 2026-06-12・和田政宗議員の討論)
- 国会会議録(参議院 本会議 2026-07-17・安達悠司議員の討論)
- 国会会議録(衆議院 法務委員会 2026-06-12・池畑浩太朗議員の討論)
- 国会会議録(衆議院 本会議 2026-06-16・平林晃議員の討論)
- 国会会議録(衆議院 法務委員会 2026-06-12・平林晃議員の討論)
- 国会会議録(衆議院 本会議 2026-06-16・井戸まさえ議員の討論)
- 国会会議録(衆議院 法務委員会 2026-06-12・小竹凱議員の討論)
- 国会会議録(衆議院 本会議 2026-06-16・高山聡史議員の討論)
- 国会会議録(参議院 本会議 2026-07-17・泉房穂議員の討論)
- 国会会議録(参議院 本会議 2026-07-17・小林さやか議員の討論)
- 国会会議録(参議院 本会議 2026-07-17・佐々木雅文議員の討論)
更新の記録
- 2026年11月2日 更新:「なぜ出されたか」「だれに関係するか」「国会での議論」を足しました(国会会議録と法律案の理由をもとに、AIが書き、別の会社のAIとプログラムで確かめました)。